グラスホッパー / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の新作。殺し屋業界のお話。殺し屋に業界なんてあるのかよ?なお話。

殺し屋の話のため、冒頭から人が死にまくりなんか伊坂幸太郎らしくない違和感を受けたんだけども、終わり方はなんかいつもの伊坂幸太郎らしくってどうもに狐につままれたような印象。そもそもまだ数作しか出していない伊坂幸太郎に「らしさ」を求めてしまっている自体が変な話だよな。人を殺さない殺し屋の話とか書いたら凄くはまりそうな気がするんだけど。

やっぱり世界観が実際にありそうでやっぱりあり得ない伊坂流SF(スコシフシギの方、もしくはスコシファンタジー)で、最近どう考えてもあり得ない超能力者同士の戦いモノ(某本格魔法少女とか某境界とか)ばっかり読んでいた身としてはちょっと新鮮でした。こういうのが読みたいのかもなぁ。

会話自体もいつもの伊坂節。まぁ、私は語彙が少ないのですぐに「○○節」とか書いちゃうんだけども、伊坂幸太郎は「伊坂節」としかいいようがないでしょ。語彙が少ない言い訳ですかね。

まぁあの会話自体を楽しめるかどうかが、すなわち伊坂幸太郎を楽しめるかどうかってことだと思うんだけども、俺は普段からあんな会話をしてみたいなぁとあこがれる斜に構えた嫌な奴なので問題なしです。まぁ、あんな会話ありえないんだが。

キャラクターとしては岩西と蝉のコンビが一番好きかな。憎まれ口の叩き合いとかジャッククリスピンとか。主人公は優柔不断なのがちょっと。鯨はなんか存在に説得力が欠けちゃう気がするというか、なんでもあり過ぎるのが受け入れられなかったなぁ。

ネットでの評判はあまりよろしくないみたいですが、個人的には十分楽しめました。伊坂作品の中では中ぐらいですかね。それだけ伊坂作品は私の中で平均点が高いということで。