陽気なギャングが地球を回す

ついに公開されてしまった映画版「陽気なギャングが地球を回す」。原作スキーとしては、複雑な心境で観に行ってきました。事前情報としてキスシーンがあるらしいことと、そのキスシーンを伊坂幸太郎自身が余り好んでいないことくらいですか、それくらいは仕入れていってきました。やっぱり映画ともなると、そして大沢たかお鈴木京香というキャストをそろえたからにはラブシーンを入れざるを得ないんでしょうか。嫌な世の中だなぁ。そんなものいらないのに。我々が欲しているのはロマンであってロマンスではないのに。わかってないなぁ。

まぁ、そう否定的な態度ばっかり取っても映画を楽しめませんからね。なるべくおおらかな気持ちで見ることにしました。原作と違ってもいいじゃないか。映画だもの。それを楽しもうじゃないか。

そうは言っても映画が始まってみたら落ち着いて観られないわけですよ。冒頭の銀行に乗り込むシーンからかっこいいんだもんなぁ。やっぱり響野の演説は最高だ。佐藤浩市すげえなぁ。なんでもできるな、この人。あと大沢たかおの成瀬がかっこよすぎる。あんな派手なシャツが似合うだなんてずるすぎる。大人気ない。祥子さん役は加藤ローサか。かわいいからいいや。田中は古田新太。まぁ、原作とはイメージ違うけどもこれはこれで適役だなぁ。キャストはなかなかじゃないか。

途中までは原作との微妙な違いが気になっていたけども、後半になるとかなり原作とは違ってきているので、かなり別物として見れました。しかし、最後はちょっとドタバタしすぎかなぁ。原作のままの展開を敢えて提示しておきながら、それを前フリとして違う展開に持っていくとか今ひとつ解せない。だったら原作の展開は提示しなきゃいいのに。まぁ、次から次へと違う人が銀行に犯人として飛び込んでくる展開も面白かったけども、彼がラスボスの正体って展開は無理があるんじゃないかなと思うんですが。まぁ、盗聴男が黒幕にしては小物すぎるってのは見ていて思ったけども、真の黒幕も大して変わらない小物ってのはどうかと思いましたよ。林の中の銃撃戦はなんだったんだっての。いや、あれは尾行に気づいていて、わざと一芝居打ったのかもしれないけども、その後、彼と響野、久遠が出会うのって偶然じゃないか。いったいどうする気だったのだか。

あと折角「映画の冒頭で登場した拳銃は、映画の終盤で必ず発砲される法則」とか素敵な伏線をわざわざ台詞にしているんだからそこを再現しなくてどうするのよ。違う拳銃が撃たれても納得しないよ、俺は。

最後に彼(指示語ばっかりだ)が裏切るってのは予想外すぎてかなり驚いたんだけども、まぁなかなか面白かったのでいいかなと。結局逃げ切れてないし。

エンディングロールでの響野の演説も最高。あれは伊坂幸太郎書下ろしらしいです。あの演説中でも席を立つ人がいるってのはちょっと驚き。あれだけの前フリで最後に何もないわけないのに。かといって、象と冷蔵庫のなぞなぞはちょっとメジャーすぎるんじゃないかとも思うんですが。

新書版のあとがきで「1時間半くらいの映画が好きです」と伊坂幸太郎は書いているんだけども、そのとおりそれくらいの長さの映画になったのは素晴らしいね。意識したのかそうじゃないのか。

結局、原作を見たうえでの感想になってしまっているのですが、原作未読の人はどう思うのかなぁ。それでも楽しめたのだったら是非原作を読んでみることをお奨めします。最高ですから。原作を100点としたらこの映画は60点くらいかなぁ。まぁまぁといったところでした。原作スキーですみません。